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合併を超えた新たな連携とその魅力

2025/06/23

「社会福祉連携推進法人」は、2022年度(令和4年度)から始まった、福祉の世界をより良くするための新しい仕組みです。これは、たくさんの社会福祉法人(例えば、高齢者施設や保育園などを運営する法人)が「私たち、一緒に頑張ろう!」と手を組み、共通の目標に向かって協力し合うための“チーム”のような法人を指します。これまでにも、法人同士が協力することはありましたが、もっとしっかりとした形で連携できるようにと、この制度が生まれました。地域の複雑な福祉のニーズに応えたり、福祉の現場で人手が足りないという大きな課題を解決したり、それぞれの法人の経営をもっと強くしたりすることを目指しています。この新しい仕組みは、それぞれの法人の良いところを活かしながら、お互いに助け合い、協力することで、一人では難しい大きな課題に立ち向かうことを可能にします。皆さんが将来、福祉の仕事に興味を持った時、この「社会福祉連携推進法人」で働くことは、地域の人々の暮らしを直接的に支え、社会全体に貢献しているという大きなやりがいを感じられるはずです。多くの仲間と協力して、より良い社会を作るという、まさに「チームで未来を創る」経験ができるでしょう。

 

一人じゃ難しい!多様なニーズと人手不足

なぜこのような新しい法人制度が必要になったのでしょうか。それは、現代社会が抱える福祉の大きな課題が背景にあります。少子高齢化が進む日本では、お年寄りの介護や子育ての支援、生活に困っている方へのサポートなど、人々の福祉に関するニーズがどんどん複雑になり、一人ひとりに合わせた多様な支援が求められるようになりました。しかし、全国に約2万もある社会福祉法人の多くは、規模が小さく、一つ一つの法人だけでは、新しいサービスを始めたり、必要な人材を確保したり、安定した経営を続けたりすることが難しくなっています。

「地域にはもっとこんなサービスが必要なのに、うちだけでは人手が足りなくてできない…」

このような状況を放っておくと、本当に支援が必要な人々に十分なサービスが届かなくなってしまうかもしれません。そこで、「それぞれの法人が得意なことを持ち寄って、地域全体で福祉を支えよう」という考えが生まれ、社会福祉連携推進法人が創設されることになったのです。この制度によって、福祉の現場で働く皆さんは、目の前の利用者さんを支えるだけでなく、地域全体の福祉の課題解決に貢献できるという、より広い視野と深いやりがいを持って仕事に取り組めるようになります。

 

6つのチカラで広がる支援

社会福祉連携推進法人が具体的に何をするのかというと、主に6つの「社会福祉連携推進業務」と呼ばれる共同事業を行います。これらの業務を通じて、各法人が単独ではできなかったり、効率が悪かったりしたことを、みんなで協力して進めることができるようになります。

地域福祉支援

1. 地域福祉支援業務

地域の人々がどんなことで困っているかを調べ、新しい支援のアイデアを考えたり、その取り組みをサポートします。

災害時支援

2. 災害時支援業務

災害時に利用者さんの安全を守る計画を立て、必要な物資を用意したり、応援職員を手配したりします。

経営支援

3. 経営支援業務

参加法人に経営ノウハウを教えたり、財務状況を分析したり、事務作業の一部を代行します。

貸付業務

4. 貸付業務

困っている社会福祉法人の社員に、事業に必要な資金を貸し付けることができます。

人材確保

5. 人材確保等業務

合同採用活動や職員研修、法人間の人事交流などをサポートします。

物資供給

6. 物資等供給業務

消耗品や設備、ICTシステムなどをまとめて購入し、コストを抑えて提供します。

これらの共同業務は、福祉サービスを受ける人々にとってより良いサービスにつながるだけでなく、そこで働く皆さんにとっても、業務の効率化やスキルアップの機会、そして何よりも「みんなで地域を支えている」という実感を得られる、大きなやりがいとなるでしょう。

 

多彩な仲間とみんなで運営

社会福祉連携推進法人は、「誰でも参加できる」わけではありませんが、社会福祉法人以外の多様な法人も「社員」(協力者、またはメンバーのような立場)として参加することができます。具体的には、社会福祉法人、社会福祉事業を経営する法人、福祉サービス事業を経営する法人、そして福祉人材を育てる養成機関(学校など)が含まれます。ただし、最低でも2つ以上の法人が必要で、その半数以上は社会福祉法人でなければなりません。

この法人の運営には、主に3つの大切な会議体があります。

  • 社員総会: 法人の最も重要なことを話し合い、決定する場です。
  • 理事会: 6人以上の理事と2人以上の監事で構成され、実際に法人を動かしていくための業務を決定し、代表理事を選びます。
  • 社会福祉連携推進評議会: 3人以上で構成され、地域の福祉の状況に詳しい人を含み、地域の声を法人運営に反映させる大切な役割を果たします。

このように、多様な専門性を持つ法人が集まり、それぞれが責任を持って運営に関わることで、より多角的で効果的な福祉サービスを提供できるようになります。皆さんがもしこの法人で働くことになったら、自分の意見が法人の運営に直接反映されたり、様々な分野の専門家と一緒に働けたりすることで、大きな達成感と成長を感じられるでしょう。

 

協力で得られるすごい効果

社会福祉連携推進法人を設立することには、本当に多くの素晴らしいメリットがあります。これらのメリットは、福祉サービスを必要とする人々により良い支援を届けるだけでなく、そこで働く皆さん自身の働きがいにもつながります。

スケールメリット

1. スケールメリット

消耗品をまとめて大量に購入することで単価が安くなったり、共同で採用活動を行うことで採用にかかる費用を抑えられたりします。

ブランド力

2. ブランド力の向上

「この法人は、たくさんの仲間と協力して、地域のために頑張っているんだな」という信頼感が生まれ、利用者さんや求職者へのアピール力が高まります。

ノウハウ共有

3. ノウハウ・資源の共有

ある法人が成功した人材育成の方法などを他の法人も学べます。サービス資源の共有も進み、地域全体の福祉ネットワークが強固になります。

これらの効果は、個々の法人がそれぞれ独立性を保ちながらも、グループとしての力を最大限に引き出し、経営を強くすることに貢献します。働く皆さんにとっては、効率化された環境で、他法人の優れた取り組みを学びながら、質の高いサービスを提供できるため、専門性も高まり、日々の仕事に大きなやりがいを感じられるはずです。

 

合併でもない、新しい連携のカタチ

社会福祉連携推進法人は、これまでの法人連携の選択肢とは異なる、新しい位置づけの仕組みです。これまでは、法人同士が協力し合う方法として、大きく分けて二つの形がありました。一つは「緩やかな連携」、もう一つは「合併」です。

しかし、「緩やかな連携」では、踏み込んだ協力が難しいという課題がありました。一方で「合併」は、合意形成に時間がかかります。

そこで、社会福祉連携推進法人は、この二つの間を埋める「中間的な選択肢」として誕生しました。この制度の大きな特徴は、それぞれの社会福祉法人が独立した法人格を保ったままで、より深い連携や協力ができる点です。つまり、「うちの法人の独立した事業は今まで通り続けるけれど、協力できることは一緒にやろう」という仕組みなのです。

「緩やかな連携」との違いで特に重要なのは、法的なルールに基づいて資金の貸し借り(貸付業務)が限定的に認められることです。これにより、経営が厳しい社員法人をグループ内でサポートできる可能性が生まれます。

この新しい連携の形は、働く皆さんにとって、自分の所属する法人の良い文化や地域とのつながりを守りながら、より大きな組織のメリット(例えば、充実した研修や共同での事業展開)を享受できることを意味します。安定した基盤と柔軟な働き方を両立できる可能性があり、仕事への安心感と挑戦意欲を両立できる環境となるでしょう。

 

全国で広がる実践と未来の課題

社会福祉連携推進法人制度は、まだ始まったばかりですが、全国でその活動が広がりを見せています。2024年3月現在、すでに20の社会福祉連携推進法人が設立されており、地域福祉の課題解決に向けて様々な取り組みが行われています。

実際に設立された法人のアンケート調査によると、全ての法人が「人材確保等業務」(職員の採用や研修、人事交流など)を実施していることが報告されており、これは福祉業界全体が抱える人材不足という共通の課題に対し、連携して取り組むことの重要性を反映していると言えるでしょう。

しかし、制度の運用にはまだ課題もあります。例えば、新しい社員法人を増やす際の手続きが複雑で、事務的な負担が大きいという声が上がっています。また、連携推進業務以外に行う「その他業務」については、その事業規模に制限があるため、新しい事業展開を検討する上での制約となることがあります。さらに、貸付業務については、資金の出どころに関する厳格なルールがあるため、実際にこの業務を行っている法人はほとんどありません。

これらの課題は、今後、制度がさらに活用され、地域福祉の充実に貢献していくために、改善が必要な点として認識されています。皆さんがもし将来、社会福祉連携推進法人で働くことになったら、これらの課題を乗り越え、より効果的な連携の形を共に模索していく、まさに制度そのものを進化させることにも関われるかもしれません。未完成な部分があるからこそ、皆さんの若い力と新しい視点が求められ、大きな社会貢献と、その過程での深いやりがいを感じられるフィールドとなるでしょう。