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若き“おくりびと”の2つの挑戦。 “伝統から文化への昇華” “あらたなエンディングの創造”

2016/02/01

木村光希

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社 代表取締役
株式会社おくりびとアカデミー代表取締役
一般社団法人日本納棺士技能協会代表理事

 

納棺士の第一人者を父にもつ若き“おくりびと”。ただ、今や一人の納棺士であることに留まらず、国内外で人材の発掘・育成、各種研修講習・啓蒙活動を精力的におこなう。そして2015年12月 納棺士として培った知識と経験を最大限に活かしたあらたな事業を開始する。

■“終焉の場”の在り方とは?
終焉・別れが悲しみの場であることは間違いない。ただ木村と言葉を交わすと“その捉え方、関わり方にはもっと自由なアプローチがあってもよいのではないか”と考えられてならない。誰よりも死と真摯に向き合い、最高の敬意を払いながら終焉に寄り添う人々。それが“おくりびと”であり木村の仕事である。


▼キャリアの始まり

木村は、納棺士の第一人者(映画「おくりびと」主演俳優の納棺技術指導者)を父にもつ。ゆえに物心ついたときから、それが当たり前の環境で育ってきた。

そもそもの納棺士の仕事であるが、終焉をむかえた遺体を清めた後、着せ替えとメイクを施し納棺をおこなう。この一連の所作を、遺体を挟んで遺族と向き合う形で施術する仕事である。衛生学の知識や処置修復術等の技術も必要とする。

大学は地元北海道のサッカー強豪校に推薦で入学。3年秋の部活引退後は、本格的に納棺士としての業務に就く。就職に関しては納棺士以外の職をふと考えたこともあったということだが、やはり研鑽した納棺士の能力を活かすべくその道に足を踏み入れる。

数週間の研修を終えると、既に能力を身につけていた木村は一人現場に向かう。そこで初めての“納棺の儀”をとりおこなう。無事につとめあげた後にご遺族からむけられた“想いの大きさ”や“おくることの尊さ”に触れこの道に進むことを決意する。


 
▼キャリア変遷
卒業後は地元北海道の納棺湯灌専門業者に入社し、納棺士としての日々を送るが、職に励む中で、木村は大きな疑問を感じていた。それは納棺士によって、所作や技術、そしておくる想いに大きな差異があったことである。その時からいずれは自分自身で“継承”する立場となることを志向する。

一年半が経った後、木村の“納棺の儀”デモンストレーションを見た中国人より自国での講師要請を受けたことを始まりに、韓国、台湾、香港、マレーシア等のアジア諸国でこれを広め教える活動をスタートする。

前述もしたが納棺士個々の技術・所作の差異や各国の“弔い”に触れあらためて死への尊厳・捉え方を考えたことを契機に、受け継がれてきた“おくりびと”としてのおこないを“文化”に昇華し“継承”するための学び伝えの場として、2013年6月に日本初の納棺士教育機関である「おくりびとアカデミー」を創設。スタンダードを構築し質の高い納棺士の育成指導に取り組む。

そして納棺士としてのおこない、アカデミーでの後進の育成指導、各種研修講習・啓蒙活動を精力的にこなしながら、納棺士としてできる“最善”を常に模索し続けた結果として、2015年12月にあらたな夢に挑戦する。


 

▼“エンディング”に最高の彩を。
2015年10月ディパーチャーズ・ジャパン株式会社の設立である。事業は“おくりびと”がおこなう葬儀事業“エンディング・プロデュース”だ。木村は納棺士個々の差異と同様に葬儀に関しても日々疑問を感じていた。すべてがそうではないが、多くは葬儀会社が主導でおこなう形式的なものになっているという事だ。

従来からの型にはめる形式的な葬送儀礼を、木村は新会社で、故人はもとより遺族や友人、周りにいる皆が望む“最高のエンディング”として創り上げたいとしている。ただ実現には問題もある。それは最高のエンディングとするには、本人の希望・意志が尊重されなくてはならないが、日本においてはどうしても前もって“死”を考えることはタブーとなっている。

“死”とは誰にでも訪れる普遍的なことであるならば、それを考えておくことは至極当たり前のことである。このタブーを木村は変えていきたいと語るが、これには自身のみならず、様々な角度からアプローチされるべき課題であるとも木村は語る。

エンディングまでの“プロセス”についても語っている。亡くなるのがどのような場所であれ、その後は葬儀会社主導の上でおこなわれるのが一般的であるが、これを木村は生前に関わった“皆がおくりびと”になる形を創り上げたいと語る。

親族だけではなく、仲の良かった友人等の声を取り入れたもの、場所も自宅や葬儀所に限ったものでなく、高齢者が住まう様々な施設等も対象だ。あくまでも“おくりびと”の知識経験を活かしたエンディング・プロデュースをおこなうが、すべてを自分たちのみでおこなうのではなく、創り手も“皆で”といった考えである。

その実現には、介護・看護との連携強化も必要であると語っている。終の棲家での生活を捉えたプロデュースが、最高の“エンディング”となるのであろう。

▼未来へのストーリー

まずは国内で自分が思い描く“エンディング・プロデュース”事業を実現・構築した後、海外ネットワークやWebを駆使したサービス・コンテンツの情報発信、事業展開の為の搬送インフラ整備構築などにも取り組んでいきたいとの事だ。

納棺士としての仕事、おくりびと文化の継承、後進の指導・育成、エンディング・プロデュース事業、そしてそれを世界に。木村の今後が大いに楽しみである。

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
http://okuribito-funeral.com/