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「視覚障がい者が車を運転?」夢の自動車運転体験ツアー潜入レポート!

「視覚障がい者が車を運転?」―誰もがそう思うのではないだろうか?今回は、そんな夢のような視覚障がい者が安全快適に自動車の運転体験ができるツアーを実現したクラブツーリズム株式会社のユニバーサルツーリズム※を紹介します!

※ユニバーサルツーリズムとは「すべての人が楽しめるように創られた旅行であり、 高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行」(観光庁HPより)です。
■バリアフリー旅行の先駆け≪クラブツーリズム株式会社≫
クラブツーリズム株式会社(以下クラブツーリズム社)は旅行業界の中でも先駆けとなる1997年より高齢者や障がい者が楽しめる様々なバリアフリー旅行を実現しており、現在はバリアフリー旅行を専門に取り扱う部門[ユニバーサルデザイン旅行センター]を立ち上げ“旅を楽しむ”にプラスして、参加することで“元気になる”ような旅行を数々企画し実現している。⇒http://www.club-t.com/theme/barrierfree/

車いすでも参加可能な海外旅行 『ペルー・マチュピチュツアー』


◆「視覚障がい者が自動車運転を楽しむ旅行」の実現

2010年に実現して以来、今回で9回目の開催となるが、その始まりはある視覚障がい者が「一生に一度でいいから自動車の運転をしてみたい」と希望したことがきっかけとなっている。実現に至るまでの道のりが険しかったことは想像に難しくないが、中でも困難であったのは実際に運転が行える場所の選定と安全性の確保であったとツアーを企画し実現したクラブツーリズム社/ユニバーサルデザイン旅行センターの渕山課長は語っている。そして奔走し見つけ出した第一回目の会場となったのは茨城県のある自動車教習所であり、教習所の支援もあって安全面の確保においても教習所教官と入念な協議を重ねて初回開催を実現している。
 
◆自動車運転体験プログラム in ツインリンクもてぎ http://www.twinring.jp/




現在このツアーは“夢”をカタチにする企業“ホンダ”の“ツインリンクもてぎ”の全面協力のもと開催されている。その広大な敷地内には自動車を運転する場所や宿泊施設はもとより、ホンダジェットやF1に触れたり、サーキット内のレースパドックやホンダコレクションホール(展示館)ではエンジン音や匂いを体感したり、そしてジップラインでは空を滑走し、森林散策では自然の香りやぬくもりをふんだんに体感できる等、この上なく充実したプログラムに進化している。


 

◆プロのインストラクターが同乗する安全・快適な運転走行
このツアーが安全面に配慮されていることはお伝えするまでもないが、運転体験においては“ツインリンクもてぎ”のプロのインストラクターの指導のもとで、とても分かり易く快適に直線走行やスラローム走行、加速・停止などの様々な運転走行を楽しめる内容となっている。

ここで疑問となるのは「視覚障がい者がどのように車を運転するのか?」であるが、視覚障がい者に位置を説明するときに使う“クロックポジション※”を用いている。ドライバーにはハンドルを9時15分の位置で握ってもらい、左手の9時を基準にする。右に曲がる時は、隣に座るインストラクターが「10時、11時、12時」と声をかけカーブの角度にあわせて“時刻”を伝えてハンドル操作をおこなう。インストラクターの的確な案内もあって、少しなれると驚くほどスムーズにカーブをきっていく。


※クロックポジション:方角や、食事の位置「3時に味噌汁、6時にご飯、11時に小鉢がありますよ」などを伝えるときに活用。


そして“ドライバー”は操作するだけでなく、自らが運転する車の挙動や窓から流れこむ風、カーブでの遠心力などを体感するのだ。私も後部座席に同乗してその様子を眺めていたが、この上なく楽しそうである。休憩時や夕飯時に皆が集まると自分の運転や感想を語り合うなど大いに盛り上がっていた。

 
◆これまでに全国から約130名が参加
参加者は全国に及びこれまで約130名の視覚障がい者(弱視から全盲まで)がこのツアーを楽しんでいる。筆者も同行した今年7月のツアーも北は北海道から南は熊本まで、年齢も20代から高齢者まで、ご夫婦で、盲導犬も一緒に、といった具合で様々な方が参加している。リピーターの方も多く、単に自動車運転を楽しむだけでなく運転技術の向上にも励んでいる点には更に驚かされた。
 

◆ツアーを支えるトラベルサポーター制度
ツアーを安全に成立させる為には支援者の存在もなくてはならない。今回のツアーには近畿日本ツーリストの社員が研修という形で同行し参加者一人ひとりに寄り添い“旅を楽しむ”お手伝いをしていた。ツアーの最後には社員各々が感想を述べていたが、参加したことでとても大きな“学び”を得ることができたとのことであり、不慣れなため大変なこともあったがそれも含めて“心から楽しめた”との感想が皆から上がっていた。









クラブツーリズム社にはトラベルサポーター制度というものがある。介助を必要とする参加者がバリアフリー旅行に参加する際に有資格者が同行し支援するという登録制のサポーター制度だ。但し、驚きなのはトラベルサポーターも旅費の一部を支払い旅行に参加している点だ。介助する・されるの関係性ではなく、支える関係性は保ちながらも互いを尊重し、一緒に“旅を楽しむ”そういった制度である。

 

◆互いを尊重しながら時間を共有し“一緒に旅を楽しむ”ツアー
「視覚障がい者の自動車運転体験ツアー」はある視覚障がい者の“希望”から始まっているが、健常者がこれを聞いた際には“夢”と捉えるのではないだろうか。それがたった一人(クラブツーリズム社 渕山氏)でもこの希望を尊重し実現の為に奔走することで周囲も同調し成立に至る。もちろん“お客様の声”であったからとも言えるが、お互いが、それに共感した皆が、思いを尊重し実現にむけて協業したからこその成功であったと思われてならない。

顧客のニーズに耳を傾け、“できない理由”ではなく、“どうやったらできるか”を考えることから生まれた誰も想像しなかった【夢の自動車運転体験ツアー】、日本のソーシャルサービス(社会福祉事業)においても参考になるヒントがたくさん詰まったツアーであると強く感じた。


※画面下部に旅の開催模様の写真を掲載しております。是非ご覧ください!
 


≪第2回 ジャパン・ツーリズム・アワードを受賞!≫

ジャパン・ツーリズム・アワードは、公益社団法人日本観光振興協会と、一般社団法人日本旅行業協会が開催する「ツーリズム EXPO ジャパン」にて国内・海外の団体・ 組織・企業の持続可能で優れた取組に対して表彰されるものであるが、この度、国内・訪日領域優秀賞ツーリズムビジネス部門に今回ご紹介のツアー「世界初!視覚障がい者 夢の自動車運転体験ツアーの実現」が表彰されている。今後もユニバーサルツーリズムにおいては、クラブツーリズム株式会社 ユニバーサルデザイン旅行センターが牽引し発展・拡大するものであると思われる。

 
文 : 加藤貴史 株式会社ディスコ キャリタス福祉プロジェクト
今回のツアーに参加することで様々な学びを得られたが、中でも“時間を共有する”ことの大切さをあらためて痛感した。“外”から見るのと、ほんのひと時でも時間を共有し“内”から見るのとでは、“見えるもの”が大きく違ってくる。そして今回の旅行のように“一緒に楽しむ”ことが加わると“気持ちの隔たり”もなくなる。
 

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